5年生以下の新チームによる栃木県新人戦の決勝は10月18日、芳賀町ひばりが丘公園野球場で行われた。決勝初進出の羽川学童野球部(小山・野木)が大会上位常連の強豪・田沼アスレチックBBC(足利・佐野)を破り初優勝。羽川学童は11月22、23日に茨城県で行われる関東大会に出場する。
(写真&文=鈴木秀樹)
■決勝
◇10月18日◇ひばりが丘公園野球場
羽川学童野球部(小山・野木)
302100=6
020010=3
田沼アスレチックBBC(足利・佐野)
【羽】石川、渡辺-渡辺、石川
【田】高橋、小島、高橋、小島、須永、小島-正田
二塁打/荒井、石川(羽)山田(田)
【評】羽川学童野球部は初回、先頭の渡辺湊斗が内野安打で出塁すると、石川大翔のバントも安打となり好機を広げ、荒井琉翔主将が右中間に2点適時二塁打を放って先制。その後も酒巻樹我、西村燈李、小櫻一真(4年)の連続バントで3点目を奪い、試合の主導権を握った。田沼アスレチックBBCは2回、山田朝陽が二塁打を放つと、高橋龍之介、村田純輝も安打で続き2点を返したが、羽川は3回にも西村、小櫻、生澤塁偉(4年)、さらに舘野琉翔(4年)と、連続バントで2点を奪い、再びリードを広げると、田沼の追撃を許さず逃げ切った。
優勝
=初
はねかわ
羽川学童野球部
(小山市)

親子で楽しみ、ついに県の頂点!!
初優勝! マウンドに駆け寄り喜び合ったあと、試合終了のあいさつを終え、一塁側応援席に向かう羽川学童野球部ナイン。待ち受けていたのは、父母らによる紙テープの嵐だった。
「おめでとう!」
色とりどりの紙テープを手に、はしゃぐ選手たちに向けた祝福の声と笑顔が、応援席にあふれた。

「土日のほかに、水曜と金曜の夕方に2時間、平日練習があるんですが、ウチの父母たちは、本当に参加率が高いんです。練習も、お父さんたちの手助けがなかったら、ここまでの成績は残せなかったかもしれません」
喜び合う選手たちの姿に目を細める酒巻祐樹監督がつぶやく。監督に就任した3年前、わずか7人だった選手数も、今では30人近くに。平日練習も、当初は監督一人で始めたが、徐々に手伝う父親たちが増えていった。
「経験者はもちろんですし、野球未経験のお父さんも、積極的に関わってくれています。練習がすごく効率的に進められるようになったんです」

1回表は石川のバント安打(上)や荒井主将の2点適時二塁打(下)などで3点を先取
上位の長打、下位のバント攻勢
初回に三番・荒井琉翔主将が右中間に鋭いライナー性の先制二塁打。3回の3得点は、4年生が並ぶ下位打線がチャンスで打席に立ち、次々とバントを決めた。そして三たび打順が先頭に返り、攻撃が始まった4回には、一番・渡辺湊斗の内野安打に続いて、二番・石川大翔が左中間二塁打を放って加点してみせた。
長打のある上位打線と、小技をきっちりとこなす下位打線。決勝はどちらも得点に絡む、理想的な攻撃で得点を重ねた。
「バントは(敬愛する小山・間東キッズの)小森正幸監督の直伝です」と酒巻監督。皆が絶妙なコースに、きっちりと転がす技術はさすがだ。

1回には酒巻樹我(上)が3点目につながる送りバントを決め、3回には4年生の小櫻(下)のバントが野選となり4点目を挙げた

投げては、先発の石川大翔から渡辺湊斗へとつなぎ、強打者の多い田沼打線の猛追をしのいでみせた。
「今日はボールが高めに浮くことがなくて、調子良かった」と振り返った石川は、140㎝34㎏と小柄だが、伸びのある力強いボールを投げ込んだ。
「全身を使って投げることを心掛けています」(石川)
先発の石川(上)は4回2失点、二番手の渡辺(下)は2回1失点とそれぞれ好投

そして守備もまた、鍛え抜かれていた。
先制後の1回裏、先頭打者の難しい場所に上がったフライを遊撃手の西村燈李が好捕する。続く二番打者のセンターに抜けようかという当たりは、二塁手の増子悠真がうまくさばいて二死に。
「今は守備が楽しいんです。自分のところに飛んで来い、と思って守ってました」(増子)
さらに三番打者の三塁線へのゴロは、4年生の三塁手・生澤塁偉がガッチリ抑えてアウトに。すべてファインプレーで三者凡退に抑える最高の立ち上がりで、チームに勢いをつけたのだった。
1回裏、三塁線のゴロをきっちりさばいた生澤(上)は4年生。二塁手の増子(下写真㊧)も好守が光った

「チームのみんなが協力して、優勝することができました。うれしいです!」
素直に喜びを語った荒井主将は、先制適時打については「一番が打つと、二番も打ってボク(三番)に回ってくるので、必ずかえす、と思ってバッターボックスに入るんです」と笑顔を見せた。
6連敗発進が良薬に
「このチームのスタートは、練習試合の6連敗だったんです」と酒巻監督。現6年生が少なかったことから、5年生には夏からのレギュラーも少なくない。つまり、新チームには当初から一定以上の経験値があったものの、ポジション変更で予想以上に戸惑いが生まれ、もたついてしまったという。
「そこからですね。特に新人戦は守備が重要になる。週末も平日練習も、守備練習中心の内容で。徹底してやってきて、守れるようになってきました。今となってみれば、あの6連敗が良い薬になったのかもしれません」(同監督)
チーム初となる、関東大会の舞台へ。「(初戦の相手となる)埼玉のチーム(西埼玉少年野球)は強そうですね…」と酒巻監督。「県を代表して出るので、自分たちのできることをしっかりとして、戦いたいですね」。荒井主将は「今日の気持ちを忘れず、みんなで楽しく、積極的に戦います!」と話した。

満36歳の酒巻監督は当メディアの『学童監督リレートークVol.22』に登場。チームの立て直しや保護者との付き合い方なども語っている(➡こちら)

準優勝
たぬま
田沼アスレチックBBC
(佐野市)

予想外の緊張と敗北も肥やしに
追い上げ届かず、敗れた田沼アスレチックBBC。県大会でも上位常連の強豪だが、この新人戦最終日は勝手が違ったようだ。
河原真二監督は試合後、あっけにとられたような表情で話した。
「まさか、選手たちがここまで緊張するとは…。この学年は県大会の上位は初めてなんです。ここまでは、調子良く打ってくれていたんですけどね…」
2回裏、村田純輝が反撃の2点適時打(上)。谷主将(下写真㊨)は好守でイニングを終え、笑顔でベンチへ

四番に座る谷航輔主将、五番の正田琉桜は、いずれも長打が期待できる大砲だ。河原監督は「(4年生で二番の)蛭川桜成もそうです。今年のチームは、いつもよりもちょっと打てるのが特徴なんです」と語る。
しかし、決勝では中軸にあと1本が出なかった。最終回、レフトにクリーンヒットを放った谷主将は「緊張はしてなかったんですけど、最初、気持ちが入らないまま試合に入ってしまって…」と立ち上がりを悔やんだ。
「相手のピッチャーはボールに伸びがあって、球が良かったのは確かなんですが、それよりも、ボクたちがいつも通りのプレーができてませんでした」。では、普段の調子でプレーできていれば…。「勝てる試合だったと思っています」
そう冷静に語った谷主将だったが、課題も忘れていなかった。
「来年は全国大会を目指します。だから、バッティングはもっと練習が必要だと思います。春までに、もっと打てるようにしないと」

決勝では幾度となくマウンドに上がった2枚看板、高橋龍之介(上)と4年生の小島千宙(下)

勝負は来春、どこまで伸びるか
内外野の守備もさすがの安定感。5回一死一塁からの挟殺プレーでは、普段の練習量が想像できるほどの落ち着きぶりだった。それでも、羽川打線のバント攻勢には処理を慌て、野選を記録してしまう場面も。
「対策はしてきたつもりだったんですが。まだまだ経験が足りないですね。緊張かな。本来の力が出せていない場面もありました」
指揮官はそう言いながらも、「ただ、今頼りないだけに、これからどこまで伸ばしてあげられるか、というのは楽しみではあります」と前向き。これも長きにわたる指導実績の積み重ねがあればこその言葉だろう。
これから冬のシーズンを経て、来年はどこまで成長した姿を見せてくれるのか。楽しみな実力派軍団だ。
